『図書館の大魔術師』考察ブログ

~しがないつぶやき【Z:sub】~

愛読書レポート『図書館の大魔術師』

■ 書誌情報

作者:泉 光 (いずみ みつ)

版元:講談社 (月刊good!アフタヌーン)

連載:2017年12月〜 (既刊6巻。2022年8月現在)

 

 

■ 感想

きかっけは、美しい表紙と作者の名前であった。

暗めの書棚の背景に、本や巻物をはじめとした大量の荷物を抱えた金髪の少年。これから主人公が冒険に出ることがひと目でわかるその表紙は、ファンタジー好きの心をわしづかみにしてきた。

作者の泉光はジャンプSQで『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のコミカライズを担当しており、コミックスも購入して、その丁寧な筆致・画風はよく知っていた。最近よくあるような、表紙だけが丁寧で、中の画は「ボールペンで描きましたか?」といったマンガとは少なくとも違うと判断できたのが、購入の決め手となった。

 

架空の世界が舞台のハイファンタジーで、登場人物たちの一部は、どことなく中央アジア的な服装をしているのだが、話を読み進めていく過程で多数の民族が登場し、それぞれ独自の服装・風習・文化を持っていることが劇中で解説されている。

細部まで描き込まれた画、登場人物たちの微妙な表情の変化、時折あるデフォルメ、民族や団体の歴史からなる壮大な世界観と、胸を打つ力強いセリフの数々。アニメーションを見ているような演出もあり、非常に読み応えのある作品である。

本編中には様々な謎が散りばめられており、劇中や単行本カバー下の補足説明で、読者は少しずつ、少しずつ、まるで霧が晴れていくかのように得られる情報が増えていくので、どんどん先を読みたくなるし、既刊を何度でも読み返したくもなる。

 

表紙や作中に「原作ソフィ=シュイム『風のカフナ』、訳 濱田泰斗」とあるため、一見すると海外のファンタジー小説が原作のコミカライズかと思われたが、当の原作も翻訳者も実在しないらしく、単行本・奥付の表記からも、作者である泉光の完全オリジナルであるらしいとわかる。

原作者とされているソフィ=シュイムはこの物語の登場人物の1人であり、そういった演出も含めて、読者は徐々に明らかになる謎解きを楽しむ、というのが正解であるようだ。

 

物語は第1巻から第3巻(話数にして1話から14話)が第1章「少年の旅立ち」となっており、貧しく、差別を受けていた主人公が、村を訪れた司書(これを劇中で“カフナ”と称する)と出会い、その憧れを胸に困難を乗り越え、自らを取り巻く世界を自分の力で変えていった様が描かれる。

 

2022年8月現在、物語は第2章「図書館の見習い司書」が中盤に差し掛かり、主人公が一人前の司書となるために同期の少年少女たち(大人の女性もいるが)と日々奮闘する様子と、世界を取り巻く情勢が緊迫しつつあり、主人公もそれに否応なく巻き込まれていきそうな雰囲気が描かれている。

徐々に明らかになる謎や、新たに張られた伏線もあり、ファンとして今後の展開に目が離せない。

 

先述したとおり、その世界観等については劇中やカバー下などで適宜解説されているのだが、話の展開とスペースの都合上、やはり断片的になってしまうので、登場人物や団体、舞台設定などについて、今後このブログでまとめページを作成していくつもりである。また、あまりやったことはないが、物語についての考察も、拙いながらはじめてみようと思う。

それほどに魅力あるマンガである。