『図書館の大魔術師』考察ブログ

~しがないつぶやき【Z:sub】~

【感想 / 考察】『図書館の大魔術師』第39話「百年の孤独(後編)」

この記事は作品の重大なネタバレを含みます。お読みになるかたはその点を充分ご承知おきください。

※本文内では、作中の用語を遠慮なく多用しています。

 

■ 感想:第39話「百年の孤独(後編)」

『図書館の大魔術師』コミックDAYS版の更新は、週末になる場合を除いて、これまでほとんどが毎月7日なのだが、今回は平日であるにもかかわらず6日だった。このブログのアクセス数が10月6日に妙に増えていたので、もしやと思いアプリを開いてみたら案の定、最新話が更新されていた。油断大敵である。

今回で第39話がようやく終了した。前回、中編の感想のときに「第39話は長くなりそう」と言ったが、後編は扉ページを除いて13ページ、合計で60ページとなり、最終的には予想に反して標準的なページ数となった。一話の分量だけ考えると、わざわざ前・中・後編に分けるほどではないはずなのだが、あらためて振り返ると、ページ数の割に情報量の多い回となった。ただ一方で、明らかになるかと思われたこと(七大魔術師の真実やクランとセドナの関係などなど)が伏線として残されたままではあるのだが。

あと、もともとキャラクターの表情だけでセリフの無い、いわゆる「間」のコマが多いマンガではあるのだが、今回は特にその「間」が多用されていた印象である。

今回で明らかになったポイントをまとめると次のようになる。

  • ココパ族の英雄パーサーはすでに死亡していた
  • 仮面勢力のゾーロとパーサーの側近ビレイはおそらく同一人物
  • シオがセドナから借りた本はコマコが造った(書いた?)

中編でオウガが「大魔術師様達もまだまだ健在」と言っていたり、24話でも守護室のニル=カンウが「パーサー様はご健在だ」と強調していただけに、「傀の大魔術師」が死亡してすでに数年が経過しているという事実は非常に不穏である。

そして、側近のビレイ=ヴァンポイーズがレオウの仮面勢力の一員ゾーロと同一人物であるなら(髪型や仕草からその可能性は非常に高く、ほぼ確定に近いが)、彼は仮面帝国再興の企てに協力している風を装いつつ、実際には現体制の崩壊後、その混乱に乗じてココパ族が(もしくは彼自身が)覇権を握ることを企図しているかのような印象を受ける。

ビレイを「彼」としましたが、男性か女性かの断定はまだできません。ただし、他のココパ族の女性の名前から推測するに、おそらく男性ではないかと。

そもそも、カドー族の村で困窮していたシンシア=ロウ=テイを、どうしてココパ族のビレイが見つけてきたのか。これはおそらく今後の物語の根幹に関わる謎である。そして、ココパ族の英雄の死が自治区の中で秘匿されていることから、他の自治区でも大魔術師の生存が疑問視されるようになってきた。長期暦アレマナカの終末を待つまでもなく、各民族の英雄の死は自治区のパワーバランスに大きな影響を与える。今後も注視すべきポイントである。

 

■ 考察:サブタイトル「百年の孤独」の真意

シオのモノローグによると、かつて「ニガヨモギの使者」襲来から世界を救った七大魔術師の伝説は真実ではなく、その真相が書かれている書こそ、シオがセドナから借りた本の内容である。この第39話で、その本はそもそもコマコが造ったらしいことが明らかになった。

劇中でシオが言っているとおり、その真相が世の明るみに出ると、大魔術師たちの人望が基礎となっている現在の体制が一気に瓦解し、民族対戦が再燃する恐れがある。いま一般に信じられている「大魔術師伝説」は戦争を終結させるための一種の方便であったとも考えられ、それゆえにコマコをはじめとする大魔術師たちは、まさに「巨大な」秘密を抱えたまま、民衆の前で英雄として振る舞わなければならなかったのである。

「理の大魔術師」の殉職を受けて、残り6人の大魔術師たちは世界の再建を託された。当人たちにとっては戦いから逃げてきた負い目もあり、英雄然とした振る舞いは誠に不本意であったはずである。コマコがよく「偉そうにする仕事」と言っているのもそのあたりが理由と考えられる。

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それでも、ソフィの言うとおり、「楽しいことも 悲しいことも 全部乗せて 前に進むため」に、その真実を物語として残すことで本来の自分を押し殺し、英雄としての姿を演じてきたのだろう。それほどの秘密をかかえるのは、まさに非常に孤独なことであり、コマコらがそうして生きてきたおよそ100年を指しての、タイトル「百年の孤独」ではないかと筆者は思うのである。

 

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