『図書館の大魔術師』考察ブログ

~しがないつぶやき【Z:sub】~

【感想 / 考察】『図書館の大魔術師』第41話「存在の耐えられない軽さ(前編①②)」

この記事は作品の重大なネタバレを含みます。お読みになるかたはその点を充分ご承知おきください。

※本文内では、作中の用語を遠慮なく多用しています。

 

1/6(金)にコミックDAYSで最新話が更新されたものの、慌ただしさにかまけていると、あっという間に2週間もの時間が経ってしまった。しかも、ここへ来てアクセス数が何となくじわじわと増え始めていて、せっかく見に来てくれる人がいるのに更新もしないままでいるのは申し訳ない気がするので、ゆえに、遅ればせながらの感想と考察である。

 

■ 感想:第41話「存在の耐えられない軽さ」

今回、①と②を合わせて16ページしかないので、あっという間に読了してしまう。ただし、単行本化の際には前編・後編がひとまとめになって1話となるので、そのときにはおそらく60数ページとなることを考えれば、それほど少ないわけでもない。

今話は1話の冒頭であり、際立って大きな事件が起きるわけでもない導入部分で、シーンは大きく分けて3つである。

  • テイの幼少期の回想から現在のマナ抑制訓練
  • 守護室ヨウ=シオウの忠告と勧誘、そしてスモモの姉モモカ
  • 福書典祭に向けての動きとそれぞれの温度差(次パートへのつなぎ)

テイの幼少期と、ヨウ=シオウの忠告については考察パートにまわすとして、ここではスモモの姉にしてアンズの娘、モモカについて触れておきたい。

今話でモモカは、スモモに対してチョップを食らわせつつ、福書典祭の企画を出すように言う役どころで登場する。カーキニ(留め飾り)の模様から、モモカの所属が総務室であることがわかるわけだが、実はこれまで名前と顔が一致しなかった。

モカの存在は、まずスモモの姉2人が司書であるという発言があり(第4巻p.73)、アンズの口から「モモカちゃん達」と語られることで娘2人のうち1人がモモカという名前だとわかった(第6巻p.181)。第31話で、目元がスモモによく似た女性が、マリガドの是非を議論するという、かなり重要な会議に参加しているのだが、6巻のカバー下解説に「カヴィシマフ一家は総務室、法務室、渉外室、見習いにそれぞれ一人ずつ所属している」とあり、その時点でやっと、その女性がスモモの姉の1人だろうという予測が立った。

第31話より。

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それが今回、スモモの呼びかけでようやく確定したというわけである。

 

■ 考察①:テイの幼少期の環境

シオは前話でイシュトア先生に頼まれ、福書典祭に向けた作品制作にテイを誘う。ところがテイは、自分は他の見習いたちと違って超難関の試験をくぐり抜けてきたわけではなく、ただ連れてこられただけだから、と言って拒絶する。もちろんシオはそれだけで諦めるわけもないだろうが、そこでシオの興味はテイの幼少期に向かう。

シオはテイに対する自身の所感として、算数以外の知識は普通の子供よりもはるかにある、と評している。冒頭のテイの回想で、マナの流出による被害から周囲の者を守るために、(おそらく)父親によって隔離されていた様子が描かれた。テイが閉じ込められている部屋の障子の破れ具合や土壁の崩れ具合、さらに男性の仮面が、これまでに登場したカドー族の仮面と比べて非常に質素なために、一見すると生活が非常に貧しかったように思える。

しかし、よく観察をしてみると、男性の着物もテイ自身の着物も、確かに質素ではあるが、別に継ぎ接ぎだらけというわけではない。つまり、テイが幽閉されていた部屋なのか離れなのか建物だけがボロボロなだけで、暮らし向きそのものはそれほど貧しかったわけではないのではないか、と見ることもできる。そうすると、シオの所感に対するひとつの解答を推測することができる。

つまり、外に出られないだけで、本を借りてもらったり、買ってきてもらったりして、書物から学ぶことはできた。それで知識は増えてゆく。しかし算数は、とくに計算に関しては繰り返しの反復練習が重要なので、1人だけで学ぶには限界があった、とは考えられないだろうか。

わざわざ考察などしなくとも、そのうち本編で描かれるだろうけれど。

 

■ 考察②:守護室の魔術師

守護室のヨウ=シオウは、精霊騒動時のアルフの行動を「守護室ごっこ」と評し、アルフのことを「勇敢な弱者」とする一方で、アルフをかばおうとする姿勢を見せたシオに対して「お前は守護室に来ないのか?」と勧誘ともとれる言葉をかける。

ヨウが魔術学園出身であることは第32話のカリンのセリフ「魔術学園出身は合理主義っすねー」からすでに明らかだったので、必然的にアルフはヨウの後輩にあたる。

魔術を扱うには何よりもまずマナの量が必要になることは、これまでの物語で触れられてきた。“圕の大魔術師”コマコ=カウリケは初対面のシオをして「あのマナがあればそれなりの魔術師にもなれる」と思っていることからも、魔術師になるための第一条件がマナの量にあることは明白である。

魔術学園をやめた理由としてアルフは「才能がなかった」と言った。アルフは自身のことを滅多に語らないので、ほとんど憶測になってしまうのだが、施設室の実技でアルフはスモモをからかいつつ、自身もマナ光石に直接触れようとしていないことから(第5巻p.34〜35)、マナ容量が少ないことが伺える。ゆえに、強力な魔術を扱うことはできないのだろう。

アルフがカフナとなった理由、または目指した理由については現状まだまだ描かれておらず、おそらく今後の展開で明らかになるはずだが、才能がない=マナが少ないがゆえに魔術学園をやめたアルフが、いまだ魔術を行使するための円盤を持ち歩いているのも、魔術師になれる機会を得るためだと考えられる。守護室に入ることができれば魔術師になれる余地は残されている。

しかし、アルフは現役の魔術師たちからその考えを否定されている。今回のヨウの発言からも、守護室のほうからアルフを求めることはないだろう。アルフに残された手段は、見習いの成績上位3名に入り、室指名権を得ることなのだが、今後、シオとは別の意味で成績上位者に入ることを妨害されるかもしれない。

 

後編へつづく。⬇

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